今回紹介するTRPGシステムは「キルデスビジネス」だ。
TRPGというと皆で協力して冒険するもの、というイメージが強いだろう。実際そういったシステムが多く存在するのだが、そうではないものも有る。
それを分かりやすく説明できると思い、今回紹介する次第だ。
◎ | いわゆる「友情破壊ゲーム」が好きな人 |
〇 | 脈絡のないハチャメチャな展開が好きな人 |
〇 | ダイスが大暴れするセッションが好きな人 |
△ | 知恵を使って問題解決するセッションを好む人 |
地獄に誘われて挑むのは……テレビ番組!?
PCたちは各々、地獄でテレビ番組を製作している「ヘルP」に何らかの経緯で接触します。そしてPCの意思に関係なく、ヘルPの番組である「キルデスビジネス」に参加することになります。
この番組の趣旨は、『黄金の魂』と呼ばれる特別な魂を持った人間(標的)を倒すことです。
『黄金の魂』はPCたちのような通常の魂とは比べ物にならない価値があり、それを目当てに地獄の悪魔たちは、標的と「何でも一つ願いをかなえる」という契約をしています。
その契約に則り、魂の取り立てを行っているのが「キルデスビジネス」という番組なのです。
地獄があるなら勿論天界もあるわけで、天界からしてみれば価値ある魂を地獄に渡したくないのも当然の話。というわけで天界から標的を守るべく派遣されている「護衛天使」とも戦うことになります。
しかしこれはあくまで「番組」の目的。PCたちの目的はこの番組を盛り上げて視聴率を稼ぎ、「ソウル」というポイントを手に入れることです。
番組内で最も「ソウル」を稼いだPCは黄金の魂を持っていなくとも、悪魔と「何でも一つ願いをかなえる」という契約をすることができます。
番組を盛り上げる方法は様々です。番組の目的通り標的を倒すも良し、深夜のバラエティ番組のようにサービスシーンマシマシでお送りしても良し、他キャラクターと交流して関係性を深めても良し、何ならスポンサーのCMだってできます。
他のPLと協力するか足を引っ張り合うか、それとも単独行動で突っ走るか。神も知らない地獄のエンターティメントの未来はどっちだ。
とにかくカオスな怒涛の展開
キルデスビジネスは、冒険企画局の持つ独特なシステム「サイコロ・フィクション」の一つだ。
サイコロ・フィクションの特徴として「ただサイコロを振っていくだけで話が進んでいく」というものがある。
TRPG自体、サイコロの出目によって展開が大きく変わるものだが、サイコロ・フィクションはそれに輪をかけてサイコロだけで話が進む、ターン制のTRPGなのだが、その順番はもちろん登場する舞台、キャラメイクもステータスどころかその背景までサイコロで決められる。
そしてキルデスビジネスは特にカオスな展開を得意としている。登場するシーンの背景をサイコロで決めるのだが、試しに振ってみると、
・消えかけて点滅する灯に照らされた + 農園
・あなたの写真で壁が埋め尽くされた + バス停
・ヘル + 店
などが発生する。控えめに言って気が狂っている。
こんな頭のおかしい世界でPCの存在感が薄れたりしないのか?という疑問があると思う。安心してほしい、キャラクターももれなくカオスなものが作れる。
公式リプレイ・同人誌・実際のセッション等含め筆者が見たことのあるPCには
・マンチカン
・積乱雲
・レイ○ンのサングラス
・ニコ○コ生放送広告チケット、
・大陸横断ウルトラクイズで最後まで破られなかったマルバツクイズの幕
などがPCとして登場している。控えめに言って気が狂っている。
念のため書いておくが、別に人間をPCにしてはいけないわけではない。むしろ基本的に人間PCの方がGMはやりやすいのでありがたい。しかしこのようなPCでも成り立つシステムなので、思う存分頭のおかしいPCを作ってみてほしい。
シナリオ不要の親切設計
これだけ頭のおかしいシステムのシナリオをどのように作ればよいのか?答えは簡単で、シナリオを作らなければよいのである。
キルデスビジネスにシナリオは不要である。
何故なら舞台はサイコロで決まるし、物語を進めるようなシステムではない。ポイントを稼いでいく、一種のパーティーゲームのようなシステムであるからだ。
とはいえ何の準備もなくセッションはできない。必要なのは倒すべき「標的」と「護衛天使」だ。
標的に付随する情報として「叶えた願い事」と「その願い事によって標的の人生および世界がどうなっているか」が必要になる。また、護衛天使は「~エル」「~レル」等で終わる、動詞っぽい名前や「天使の中でもどういう立場か」といった情報があると面白い。
TRPGなのにシナリオが不要というのがこのシステムの素晴らしいところの一つだ。おかげでGMは少ない苦労でセッションに臨めるし、PLはシナリオ崩壊を気にせずハチャメチャを楽しめる。
最後に
ここまでリアリティーショーTRPG「キルデスビジネス」を紹介してきた。
シナリオ不要で、遠慮なくメチャクチャができる、パーティーゲーム感覚のシステムだ。ルールブックにリプレイも付属しているので、経験がなくとも雰囲気をつかむことができる。
カオスでメチャクチャな反面、随所に親切な気配りがされているので、気になった方は気軽に手に取ってみていただきたい。